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「暗黒物体ダークマターの解明」パトリシア・バーチャット

SPEAKER:パトリシア・バーチャット


物理学者であるパトリシア・バーチャットが宇宙を作り出している大部分であるダークマターとダークエネルギーについて解明します。この2つの要素は宇宙全体の96%を占め、宇宙に計り知れない影響を及ぼしています。しかし同時に現在の科学技術を駆使しても、その存在は謎に満ちています。


16:06


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TED2008

全文
私は素粒子物理学者として 素粒子の 根本的な動きを研究しています これまでの研究にあたりミクロの観察には スタンフォード大学で電子加速器などを用いて 研究をしてきました ですが最近 私の関心はこうしたミクロの視点から 宇宙という大きなスケールへと移行しています それは 説明していくうちにご理解いただけると思いますが ミクロの世界とマクロの世界は非常に密接に関わっています では 21世紀の視野でみる宇宙とはどのような世界なのか 一体何で作られ どのような謎が潜んでいるのか それらを発表していきたいと思います

近年 解明された事なのですが 宇宙を形成している通常物質 ここでいう通常物質は 例えば あなた 私 植物 星 そして銀河などを指し これらは 宇宙全体のほんの数パーセントにしか 満たないという事実が分かりました 宇宙全体の約1/4を占めている物質は 私たちの目には見えないものであり それは電磁スペクトルを吸収もしなければ 放出してもいない つまり電磁スペクトルに映し出されない物質です 電磁スペクトルに無反応な物質なため 検出することができません 全く反応を起こさない物質の存在を私たちがどのように知ったのかというと そこに重力が存在するからです 実際 この無反応な物質(ダークマター)が 宇宙全体に存在する重力の大半を占めているのです その根拠も説明していきます

では このグラフの残りは何を表しているのでしょう これはダークエネルギーという謎めいた物質です ダークエネルギーに関しての説明は後ほど… ではさっそく ダークマターの存在について目を向けてみましょう 銀河全般に言えることで このような渦巻銀河は特に 過半数の星が銀河の中心部に集中しています この巨大な星のかたまりでできた渦によって 銀河内の円形軌道は保たれているのです 物理学を学んだ人なら 即座に分かると思いますが このように軌道を回る星があった場合 中心部に近い星は 外側にある星よりも 速いスピードで回っています

ですから星が軌道を回る速さは 内側よりも外側のほうが遅いと予測するはずです 中心部から星までの距離と星の動く速度を 図で表すと 距離と速度は反比例の関係にあると 予測するでしょう ですが 実際はそうではなく 星の速度はどの位置においても 一定を保っていたのです もし一定ならば そこにある星には 私たちには見えない物質からの引力が働いているはずです 実際に 宇宙に存在するどんな銀河にも このような肉眼で確認する事のできないダークマターの雲で覆われている事が解明されました また ダークマターは銀河の形体は異なり 球面的な形であり その球体は銀河よりも広い範囲で存在しているのです 通常 私たちは銀河だけにとらわれがちですが 実際には 銀河の構造や原動力を支配するダークマターが存在しています

銀河は宇宙にバラバラとちりばめられて出来上がってたのではなく 集合体を作る性質を持っています これは有名な集合体の例で かみのけ座銀河団と言います この銀河団には何千もの銀河が存在していて どれも白くぼやけて楕円のような形をしています 今の瞬間の銀河のスナップ写真をとってみるとして 10年後に撮影するスナップ写真と比較してみても なんら変化はありません しかし実際には これらの銀河は驚くほどに速いスピードで移動していて この重力の渦に沿うように動いているのです 全ての銀河は このように動いているわけで 私たちは銀河の動く速度と軌道速度を測定し この銀河団の重力質量を調べる事ができます

やはり 実際に目で見て確認できる分以上の 重力質量がそこから検出されます 仮に電磁スペクトルを別の角度から分析して この銀河団に含まれている大量のガスを測定してみても 巨大な重力質量の謎は解けません 実際に ここでは通常物質よりも 約10倍にあたる質量が肉眼で測定できない形 つまりダークマターとして存在しています このダークマターも見る事が出来れば いいですよね 大きな青いまるで囲んであるのは ダークマターの代わりです もっと分かりやすく見る方法はないのでしょうか?それがあるんです

では その説明をしましょう これが観察者の視点です 観察者の眼でも天体望遠鏡でも構いません ここに銀河があるとしましょう 観察者の眼からはどのように見えますか? 銀河から放たれた光が宇宙を 何十億年も旅して 観測者の眼にたどり着きます 銀河の位置をどのように推測できるのかというと 光の飛んで来た方向から 直線で結んだ位置に銀河があると憶測します 光がこのような角度から眼に入ると考えると 銀河はこの直線の延長線上にあるはずです では この二つの間にもう一つの銀河団を置いてみましょう もちろんこの銀河団にはダークマターが存在しています では もう一つの光がこのように射していた場合どうなるのでしょう ここではアインシュタインの 相対性理論が重要となります ダークマターの巨大な質量によって発生した重力は 粒子の軌道だけではなく そこに存在する光さえも曲げてしまいます

ですから この光も重力によって屈折し 私たち 観測者の眼に入ってくるのです 観測者の立場から見てみると 銀河は 実際よりも上に存在しているように映るはずです 銀河が光の直線上にあると推測するので 実際よりも上に位置づけてしまうわけです 他にはどのように光が 観測者の眼に届いているのでしょう? はい そうです あちらの方のいう通り 下に曲がります 下に曲がった光は重力によって 屈折し 上昇しながら 観測者の眼に入り 実際より下に位置して見えます

それでは ここから応用編です 私たちの住む三次元の世界は 縦 横 奥行きの空間なのですが そう考えると 他にはどのように光が進むと考えられますか? その通りです!光は円すいに変形します 光が銀河団の引力で屈折し 円すいの形で進んで 観測者の眼に入ります では 円すい形の光は実際の眼球にどのように映るのでしょう? 丸い輪です アインシュタインはこの現象を予言していた為 アインシュタインリングと呼ばれています このアインシュタインリングが完璧なリングの形として現れるのは 3つ全てが一直線上にある時のみです もし 少しでも傾いている場合 それは違うイメージとして映るでしょう

今夜のパーティーでもできる実験を教えましょう どのようなイメージが浮かぶのか調べる事ができます この効果を再現するのに最適な形をしたレンズを 作り出すことが出来るのです この道具を重力レンズと呼んでいます これが 必要な材料です (笑) 上の部分は省きます この下の部分が大事なのです 私の家では割れたワイングラスは 底をとっておき 機械工場へ持って行きます 研磨をかけた後には重力レンズができるというわけです このようにしてレンズを用意したら 次に必要なものは紙ナプキンです 私は物理学者なのでグラフ用紙を使いますが(笑) この紙ナプキンの中心部に銀河を描きます そして その上に重力レンズをのせると アインシュタインリングが出来ているのが分かります では レンズを少し中心部からずらしてみましょう するとリングは割れて弓の形になります このようにしてレンズを活用します グラフ用紙を見て分かるように 直線はゆがんで曲線のように見えます この直線を曲げる力が重力レンズによって 正確に表現されているのです

こういった現象を実際の天体望遠鏡はとらえているのでしょうか? このような歪んだ弓の形の光は銀河団の中に存在しているのでしょうか? その答えは YESです これはハッブル宇宙望遠鏡からの画像です 画像の多くはこの宇宙望遠鏡が 最近のものではありませんが この金色に輝く銀河の数々を見てみると これが銀河団だと分かります 銀河団はダークマターによって引き寄せられて出来た集合体で 光を屈折させる原因です そして それにより 銀河の光は歪んでみえるのです ですから これらの縦や横に流れる光の帯は 実際にはずっと離れた位置にある銀河がひずんでしまった姿なのです

次に この画像の光の歪み具合を測って そこにどれだけの質量が存在しているのかを 計算で導きだします 結果 そこには極めて大きな質量が存在しました 実際に眼で確認できる通り これらの弓形は個々の銀河に集中しているのではなく 無数に広がった状態で存在している事が分かります そしてこのダークマターの中に 銀河団が含まれているのです この画像がダークマターの影響を 肉眼でかろうじて捉えられる画像です

では 簡単におさらいです 宇宙の 1/4はダークマターという 重力をもつ質量で 占められている証拠は 銀河の周りを回る星のスピードが非常に速いので ダークマターが影響しているはずで 銀河団の中の銀河の回転速度からも ダークマターの影響が考えられます そして光を屈折させる重力レンズ効果からも ダークマターが影響しているはずだと言えるのです

では ここからはダークエネルギーについて話します ダークエネルギーの存在を理解する為には 先ほどの スティーヴンホーキング氏の話に戻る必要があります 宇宙そのものが膨張し拡大しているという事実です この果てなく続く宇宙の一部に 4つの銀河を並べるとしましょう その間に巻き尺を配置すると仮定します その縦と横に広がる線は それぞれの位置を計測することができます もし 実際にそのような事が出来た場合 この4つの銀河は日々 年々 やがては何十億年という時を経て 少しずつお互いの距離を増し 離れていっている事が結果的に現れるのです これは これら4つの銀河が お互いから離れるようにして動いているからではありません これらの銀河は宇宙を駆け巡っているのではないのです 銀河の距離が離れていったのは 宇宙そのものが膨張しているからなのです それが ユニバース つまり宇宙全体の姿なのです 宇宙はぐんぐんと拡大し続けています

ホーキング氏も触れていたのは ビッグバンが起きた後 宇宙が極度の速さで拡大したという点です しかし 引力をもつ物質が宇宙に 存在するために 宇宙の拡大を減速させる性質があります よって拡大速度は時間とともに低下するのです 20世紀の科学者達は この宇宙の拡大は 永遠に続くものなのか それとも 衰えながらも 永遠に続くのか あるいは やがては絶えてしまうものなのか議論しました 速度が低下した後に収縮するのではないかとの意見もありました そして10年ほど前に 2組の物理学者と天文学者達が 宇宙の膨張速度の減少率を 計測したのです 今日の膨張率は数十億年昔と比べて どのくらい減少していたのでしょう

結果は予想に反して驚くべきもので 宇宙の膨張率は数十億年前に比べて 増加している事が分かったのです これは 宇宙が以前よりも速いスピードで拡大している事を表し 大半の予想をくつがえす結果でした なぜ宇宙が膨張率を増しながら拡大しているのかという原因ははっきりと分かっていません 誰もが予想だにしなかった結果で 想像に反する発見でした ですから 私たちには宇宙が拡大し続けている原因を探る必要がありました この事を数学上で説明する場合 この一連の現象を言い表すのに エネルギーの存在を使います このエネルギーは これまでに見てきたものとは全く別の種類で ダークエネルギーと呼ばれています ダークエネルギーは宇宙が膨張する要因を作り出しています 公式にするのは 現時点ではできません 公式にする妥当性も まだ説明がつかないのです

ですので 現段階で私の言える事は ダークマターとダークエネルギーは 全くの別物であるという事 この二つの謎の物体が宇宙全体の大半を占めているという事 そしてこの二つは全く別の役割を果たしているという事です ダークマターは重力があるために その周辺にある銀河を引き寄せ 銀河団という骨組みを構成する基になります これは ダークマターの重力無くしては出来ません 一方で ダークエネルギーは 宇宙空間を拡大させる事で 銀河同士の距離を広げ 重力の影響を減少させる働きがあります 重力を減少させる事で 銀河団の構築を妨げるのです ですから 銀河団を観察し 銀河団の数密度や 時間との相対関係を調べる事で どのようにダークマターとダークエネルギーが 銀河団の形成に影響しているのかを探る事が出来ます

ダークエネルギーに関しては 先ほども言ったように その存在を証明するような理論は発表されていません ダークマターに関しては 有力な理論が存在します ダークマターの立証につながる有力理論とは 数学的にも立証できるもので その存在がきちんと確立されている理論の事であり 偶然にも全く異なった現象を 説明する為に導きだされた理論です まだここでは触れていませんが どれも非常に作用のゆるい素粒子を 予測している理論です

物理では理想的なパターンです 数学的に説明のつく理論が作られ それが後に 別の現象を説明に使われるのです ですが 私たちは未だこれらの理論が ダークマターを解き明かす候補なのか わかりません もしかしたら まったく違った場所に答えはあるのかもしれません ダークマターの素粒子は この場にでさえ存在しています ドアから入って来たのではなく 全ての物体を通り抜けます 建物も 地球さえも通り抜けて どの物体とも作用することはありません

ですから ダークマターの存在を探知する とても高性能の探知機を作ることも考えられます ダークマターに反応する鉱石はないか 同僚の一人が 共同研究者たちと協力して そのような探知機を造りました ミネソタ州の鉄鉱地帯の地中奥深くに その探知機を置き 研究を続けた結果 二日前には 鋭い結果が発表されました 実際に何かの存在を確認したという訳ではないのですが ダークマターが他の物体と作用の強さの限度を示唆するものでした 今年の終わりにはサテライト望遠鏡が打ち上げられます そして銀河の中心部を焦点として観測し ダークマターの素粒子が消滅した際に発する ガンマ線がその望遠鏡でとらえられるかもしれません 今年の末には稼働し始める 大型ハドロン衝突型加速器の観測結果にも注目です 大型ハドロン衝突型加速器によって ダークマター素粒子が生まれるかもしれません

ダークマターは他の物質と 作用しない為 加速器には探知されないでしょう つまり エネルギー質量が減少すると予想されるのです しかしながら エネルギー質量の損失を鍵としている 理論が多数存在しているため それぞれの差を見極める事が必要です そして最後に ダークマターやダークエネルギーの存在に対する疑問を解くためにデザインされた 天体望遠鏡が造られています さらに3つの宇宙望遠鏡も現在打ち上げられる予定で ダークマターやダークエネルギーの 調査開始に乗り出しています 今日はダークマターと ダークエネルギーとは何かという 物理学における大きな謎を話しました この件に関して質問がある方が沢山いらっしゃると思います その方は是非 今からの72時間を使って 私の所へお越し下さい 喜んで質問をお受けします ありがとう (拍手)